大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2465号 判決

原判決が被告人は原判示各日時場所において、いずれも賍品たるの情を知りながら、前後二回に亘り、銑鉄約二屯宛を代金合計金一万八千円で買い受けたという事実を認定し、その証拠として右各知情の点につき原審公判廷における証人綱野駒吉、同藤代祐次郞の各供述、即ち原審第八回公判調書中の証人綱野駒吉、同藤代祐次郞の各供述記載を挙示していることはいずれも所論のとおりである。よつて、右各供述記載によつて、原判示知情の点を認定することができるかどうかについて判断をして見ると、原審第八回公判調書には、証人綱野駒吉の供述として、同証人は大東運輸株式会社の常務取締役で同会社は昭和二十四年九月頃、武州海運株式会社に鉱工品公団所有の銑鉄五、六百屯の輸送を依頼したことがあり、その銑鉄の形体はいわゆる蒲鉾型のもので、長さは下部が一尺九寸、上部が一尺六寸、高さは二寸位、重さは十七瓩であつたこと。その銑鉄は輸送中一部盜難にあつたこと。その銑鉄中にはいわゆるサナ下はなかつたことの記載があり、又同調書には証人藤代祐次郞の供述として同証人は武州海運株式会社の社員で、同会社の取り扱う荷物の運送契約や荷物の積卸しをやつていること、昭和二十四年九月武州海運株式会社は大東運輸株式会社から輸入品の銑鉄(長さ一尺位高さ三、四寸位、重さ十七瓩のもの)の輸送を依頼されたこと。その送荷先は埼玉県川口市であつたこと。同銑鉄は伊奈利丸という船に積み込んで輸送したが、その途中である川口市の水門のところで同船の船長が勝手にこれを処分してしまつたこと。通常銑鉄のサナ下というものは崩れた鉄の粉のようなものであること。その頃進昭丸という船に積み込んだ銑鉄も同船の機関士長島平吉が処分してしまつたことがあること。その銑鉄にもいわゆるサナ下はなかつたこと。サナ下はその処分権がないものが勝手に処分する権限がないこと。その他原判示各知情の点に直援関係のない事柄の記載があるけれども、右各知情の点についてはこれを認むるに足る記載は一つとして、発見することはできないのである。そして、原判決には、原判示事実の証拠説明として、

「右の事実中、知情の点を除くその余の点は、

一、藤代祐次郞の提出した被害届又はその謄本三通

二、被告人の司法警察員並びに副検事に対する各供述調書

を綜合して認め、

知情の点は、証人綱野駒吉、同藤代祐次郞の当公廷における各供述

を綜合してこれを認める」

との記載があるから、原審は原判示事実を知情の点と、その余の点とに分けてそれぞれ、証拠によつてこれを認定しているのであつて、原判決挙示の証拠全部を綜合して原判示事実全部を認定しているのではないことが明らかである。されば、知情の点に関する右証拠によつて原判示各知情の事実を立証することができない以上(原判決挙示の証拠によつて原判示事実が認められると否とに拘らず)、原判決には、その証拠説明について欠くるところがあるというべきである。しかのみならず、職権で調査すると右証拠説明中には前記のとおり、

「右の事実中知情の点を除くその余の点は、

一、藤代祐次郞の提出した被害届又はその謄本三通」

という記載があるから、この点について按ずるに、右証拠説明の意図するところは、恐らく、右被害届或はその謄本三通のうち原判示事実に沿うものをもつて証拠とするということにあるものと解せられるのであるが、証拠の標目は、かかる甲又は乙というような択一的な不確定な方法でこれを表示すべきものではないと解すべきである。けだし、刑事訴訟法及び刑事訴訟規則にも、かかる方法による証拠説明を許している明文がないのみならず、刑事訴訟における確実及び迅速の要求は原則として訴訟行為に条件を附することを許さないものと解すべきところ(かかる要求を害しない場合はそのような附款も許さるべきであろう)、前記のような判決上の附款は裁判の確実性を阻害するものと認むべきであるからである。果して然らば、前記「被害届又はその謄本三通」という部分はこれを適法な証拠説明とはいえないから、この部分を除くと、知情の点を除くその余の点の証拠は前記二、の被告人司法警察員並びに副検事に対する各供述調書のみとなつてしまい、その補強証拠を欠如する結果となるのである。従つて、原判決にはその証拠説明の部分において、前記知情の点を除くその余の点について、右に説明したような二つの瑕疵があるのであるから、原判決には刑事訴訟法第三百七十八条第四号にいわゆる判決に理由を附しない違法があるものといわなければならない。

よつて、同弁護人の控訴の趣意第二点に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第四号、第四百条本文に則り、主文のとおり判決する。

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